ドクター蜂谷のStay Healthy!
2020.08.04
インスリン抵抗性(メタボの本体)と2型糖尿病の発症機序
内臓脂肪性肥満がメタボリックシンドロームの本体であり、その底流にあるのがインスリン抵抗性であると先に示しました。実はインスリン抵抗性は驚くほど多くの病気を起こします。例えば2型糖尿病・高血圧・脂質異常・アルツハイマー型認知症・動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症etc.)など。
2020.06.29
『メタボとは2.メタボリックシンドロームの診断基準について』
メタボリックシンドロームの原因は内臓脂肪にあります。ですから、診断に必須なのは内臓脂肪の多少です。CTスキャンで腹部断面の内臓脂肪面積100㎠が目安とされていますが、CTスキャンは大掛かりな検査機器であり、簡単には検査はできません。村の小学校や公民館でも手軽に健診できるようにと100㎠に相当するウエスト径を調べたところ、日本人では男性85㎝、女性90㎝に相当することが解りました。
ところで、肥満ということであれば、BMIで良いのではという意見が出ると思います。BMIは世界中で用いられる体格指数、体重(Kg)を
身長(m)×身長(m)で割ったものです。体重60Kg、身長160㎝であれば、BMIは60÷1.6÷1.6で23.4となります。ちなみに18.5~25未満が普通体重で、25以上は肥満、18.5未満は低体重とされます。
なぜBMIではなくて、臍の高さのウエスト周囲径が用いられるのか、重要なのは内臓脂肪であって皮下脂肪ではないということなのです。皮下脂肪が多いための肥満は内臓脂肪が少なければメタボとは言えません。また、男性85㎝女性90㎝と、男性が小さいのは日本人に特徴的なようです。
メタボの診断基準は2005年4月にできました。下記の通りです。
必須項目:腹囲径(男性85㎝,女性90㎝)
があり、さらに下記の3項目中2項目が該当するとき。①血圧130/80以上(または治療中)、②空腹時血糖値110以上(または糖尿病治療
中)③中性脂肪150以上またはHDL-コレステロール(善玉コレステロール)40未満または治療中。
ここでLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が診断基準に入らないのは何故かと疑問に思われるかもしれません。実は、LDL-コレステロールはメタボリックシンドロームとは無関係に単独で危険因子であることが解っており、内臓脂肪肥満(インスリン抵抗性)とは別の機序によるものだからです。※インスリン抵抗性という新しい言葉が出てきました。長くなるので今回は省略(次回に)しますが、内臓脂肪過多とインスリン抵抗性は同じことを意味します。そしてインスリン抵抗性(インスリンというホルモンが効きにくい体質)こそが現在話題となっている2型糖尿病の根本的な原因なのです。
2020.06.08
『メタボとは ・・・ 1.本体は内臓脂肪』
メタボ予防とか、メタボ対策とか、メタボという言葉は日常的に使われていますが、これはメタボリックシンドロームからの派生語です。また、このメタボリックシンドロームという概念の歴史は非常に浅く、最近のものです。
かつて私たちは生活習慣病の予防は、独立した危険因子(高血圧、高血糖、脂質異常、肥満など)一つ一つに対処していくことと考えていました。しかし、また同時に、各危険因子はそれぞれ互いに関連性が強い(高血圧は肥満に多く、肥満では脂質異常や糖尿病になりやすい、糖尿病では高血圧の人が多いなど)ということも知られていました。一見、それぞれ独立しているように見える危険因子の底流に共通する何かが潜んでいると解り、メタボリックシンドロームという概念が確立したのです。
一方、脂肪組織には、内臓脂肪と皮下脂肪があります。かつて、脂肪組織(それを形成する脂肪細胞)は単なるエネルギー貯蔵庫であると考えられていました。ところが、現在では、脂肪組織は最大の内分泌臓器と考えらえており、数百種類に及ぶ生理活性物質(ホルモン・アデイポサイトカイン)を分泌し、身体全体に多大な影響を及ぼしていることが解っています。(皮下脂肪も大きな役割を持っていますが、今回は、内臓脂肪の変身について触れたいと思います。)過剰な栄養が内臓脂肪に貯まると、内臓脂肪細胞は大型になり、栄養が減少すれば小型脂肪細胞になります。大型が大半を占めれば内臓脂肪肥満になり、小型になれば痩せを意味します。大型脂肪細胞からは、例えばTNF-α、PAI-1など血管を傷つけたり、血栓を作り易くするような悪玉の炎症性サイトカインが多数分泌され、一方、小型脂肪細動からはアデイポネクチンという抗糖尿病・抗動脈硬化作用を持つ善玉のサイトカインが分泌されます。このことから、内臓脂肪の多い(大型脂肪細胞)、少ない(小型脂肪細胞)が生活習慣病のなりやすさに大きく影響を与えることがわかります。
独立した危険因子(高血圧、高血糖、脂質異常、肥満など)と考えられていた因子の底流にある共通したものの正体は悪玉サイトカインであり、内臓脂肪細胞の大型化、つまり内臓脂肪肥満だったのです。改善策は言うに及ばず、小型にすること(内臓脂肪を少なくすること)に他なりません。摂取エネルギーを少なく、消費エネルギーを多くして、内臓脂肪を小型化しましょう。
2020.05.29
『医学的に評価される食事の摂り方』
「3大栄養素(糖質・蛋白質・脂質)を適切な割合で、ビタミン・ミネラルが不足しないように、そして食物線維は特に十分に食べましょう」と従来から推奨されてきました。ここでは最近の糖尿病学の深化を踏まえ、さらに歩を進めたいと思います。
2020.05.24
『血管やメタボに優しい食習慣』
「食後の急激な血糖値の上昇は動脈硬化の促進や肥満・糖尿病の悪化をもたらす。空腹時と食後の血糖値の差は小さい方が良い。」とされています。また従来、食物線維を先に食べて吸収を緩やかにすること、腸内細菌叢を整えて置くこと、食塩摂取を少なくすること、などが健康的な食習慣として推奨されています。
今回はそれに追加して、「蛋白質を炭水化物よりも先に食べる」ということを考えてみます。
アミノ酸(蛋白質の消化物)や糖(炭水化物)は小腸から血液中へと吸収されますが、この時、吸収と同時に、インクレチンというホルモンが小腸L細胞から分泌されます。さらにインクレチンは血糖値を下げる有名なホルモン(インスリン)の分泌を膵臓に促します。アミノ酸(蛋白質)を先に食べることで、事前に糖を受け入れる準備(インスリン分泌)を膵臓に働きかけて置いてから糖(炭水化物)を摂取する。そうやって食後の急峻な血糖値上昇を抑制することは身体に優しい食習慣の一つではないでしょうか。
【蜂谷春雄プロフィール】
高岡市伏木生まれで、伏木保育園・伏木小学校・伏木中学・高岡高校。大学で初めて市外に出て自治医科大学(6年間全寮制で仲間と毎晩地域医療談義)。
昭和55年、富山県立中央病院(2年間)臨床研修医。
昭和57年、氷見市民病院が僻地中核病院に指定され、それと同時に富山県からの出向で氷見市立氷見市民病院(26年間)。僻地巡回診療を26年行った。気が付くと、27歳の最年少医師から53歳の最古参医師となっていた。氷見では副院長・地域医療連携室長・糖尿病センター長を兼務。
平成20年4月、高岡市民病院内科主任部長に着任、その後、医療局長を経て、市民病院理事・副院長で令和2年3月定年退職。
僻地診療26年間と医療機関連携を評価され、平成23年に第5回地域医療貢献奨励賞し家内と一緒に東京で授賞式に行ったことや高岡市民病院を地域医療支援病院にできたことなどが嬉しかった思い出。
定年退職後の現在、高岡市民病院非常勤医療相談役で主に内科外来診療と糖尿病を担当。日本糖尿病学会専門医、日本糖尿病協会療養指導医、富山県糖尿病対策推進会議幹事、日本糖尿病協会富山県支部常任理事、日本内科学会北陸支部評議委員、日本医師会認定産業医。
地域の医療機関へ応援や将来の医療スタッフの育成などを通して、地域医療にさらなる貢献ができればと願っている。
令和2年5月22日
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